定常運用に向けて、衛星の初期運用が佳境を迎えています
株式会社アクセルスペース(本社:東京都中央区、代表取締役:中村友哉)は、株式会社ウェザーニューズと共同で開発し、2017年7月14日15:36(日本時間)にカザフスタン・バイコヌール宇宙基地より打ち上げが成功した気象・海象観測超小型衛星「WNISAT-1R」について、搭載された主光学カメラの正常動作を確認し、地球観測画像を取得することに成功しました。現在WNISAT-1Rは初期運用中であり、衛星の基本的な健康状態を確認する「クリティカルフェーズ」を終了し、バス部各機器の動作確認をする「バス系チェックアウト」と搭載観測機器の状態を確認する「ミッション系チェックアウト」を実施しています。全観測機器の軌道上動作を確認後、自動運用システムのチェックを経て、ウェザーニューズに運用を移管し、定常運用へと移行を進めてまいります。
ファーストライト画像
図1~4はWNISAT-1Rから得られた4枚の画像です。また、各画像の撮影場所と時刻の詳細を図5に示します。なお本画像データは、株式会社ウェザーニューズ、株式会社アクセルスペース、東海大学情報技術センター横塚研究室の共同研究の成果により取得されました。
図1:ヴィルキツキー海峡(観測波長:パンクロ
図2:グリーンランド北部(観測波長:パンクロ
図3:イタリア(観測波長:赤)
図4:九州・四国(観測波長:近赤外)
図5:各画像が撮影された場所と時刻
図 1 のヴィルキツキー海峡は北極海航路における最大の難所であり、海氷分布が詳細に解析できます。図 4 は太平洋上を長く迷走し、8 月 5 日に奄美地方に近づいたのちに日本を縦断して各地に被害をもた らした台風5号(本日午前3時に山形県沖で温帯低気圧に変化)を撮影したものです。
参考:WNISAT-1R概要
WNISAT-1Rは光学カメラによる気象・海象観測を主な目的とした質量43kgの超小型衛星です。冬場の渤海(中国)・セントローレンス湾(カナダ)や夏季の北極海を通航する船会社に対し最適な航路情報を提供するためには、海氷分布を高頻度に知ることが必要です。これを実現するためには世界中の海氷を観測する衛星を開発することが最も効果的であると判断されたことから、WNISAT-1Rプロジェクトが計画されました。本衛星は2013年に打ち上げたWNISAT-1で獲得した技術を継承・発展させ、アクセルスペースとウェザーニューズが共同で開発したものです。なお、WNISAT-1Rはメインミッションである各地海氷の光学観測に加え、「光学カメラによる台風・活動中の火山などの観測」「GPS等の測位衛星から放射される電波(マイクロ波)が地表で反射して戻ってくる波を観測することで地表の状態を推定するGNSS-R (Global Navigation Satellite System – Reflectometry) (注 1) 」をミッションとしています。
参考:WNISAT-1Rミッション系性能
(注意)
・各画像は一つの観測波長から得られたものであり、カラー表示にはなりません。
・各画像の縮尺は異なります。
用語解説
(注1) GNSS:Global Navigation Satellite System(全地球型航法衛星システム)の略。米国により開発・運用されているGPSの他、ロシアのGLONASSや欧州のGalileoなどもGNSSの一種。
(注2) パンクロマティック(Panchromatic)の略で、本衛星では可視波長域全域に感度を持たせたバンドのことを指す。