本連載では、未来に向けてアクセルスペースをリードするメンバーをご紹介します。第7回に登場するのは、Co-CTOの國母 隆一です。
ソフトウェアエンジニアの立場から見た、衛星における運用とその自動化の意味や求めるエンジニアの人材像、「アクセルスペース流」のビジネスの特徴などについて話を聞きます。
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プロフィール
國母 隆一/Co-CTO(情報技術担当)
2003年に東京大学大学院新領域創成科学研究科修士課程を修了後、NTTアイティ株式会社にてWeb会議ソフトウェアの開発・サービス提供に携わる。2018年10月にアクセルスペースに入社しGRUS衛星コンステレーションの自動運用、および、そのための運用システムの開発を行う。2021年4月から2023年5月まで、情報システム部門長兼務。現在、株式会社アクセルスペース執行役員 Co-CTO(情報技術担当)。
エンジニアとしての情熱を傾けられる仕事を探して
アクセルスペースの衛星運用に関するエンジニア募集を見かけたのは、前職の通信系企業で、マネジメントやマーケティング業務を期待され始めた時期でした。約15年の勤続の中で主にソフトウェアエンジニアとしてキャリアを重ねてきた自分に、「この先情熱を傾けられる仕事は何だろう」と問いかけたとき、チャレンジしたい気持ちが高まって転職を決めました。
当時の私にとっての宇宙は、子どもの頃からSF小説やテレビ番組などを通じて親しんだ存在でしたが、仕事としては全く未知の領域でした。しかし結果として、業界の違いによる仕事上の大きなギャップは感じませんでした。おそらく課題を理解、分解しながらコード化していくソフトウェア開発の基礎には、分野を越えて共通する点があるのだと思います。
入社後間もなく携わったのは、GRUS衛星コンステレーション※1の自動運用システムの開発です。並行して、情報システム部門も管掌※2しました。直近では衛星のワンストップサービス「AxelLiner」の統一インターフェース(AxelLiner Terminal)のコンセプト確立や構築、AxelLiner、AxelGlobe両事業本部のソフトウェア開発チームへの支援、ソフトウェアエンジニアの採用などにも携わっています。
※1 複数の人工衛星を協調させてひとつのシステムとして動作させること
※2 現在は、情報セキュリティを佐々木CISO、ITインフラを宮川CIO・CDOが担当
衛星開発における運用と自動化の意義
「衛星の自動運用システム」と言われても、多くの方は「衛星の運用」そのものをイメージしにくいかもしれません。衛星における運用の代表例としては、テレメトリと呼ばれる観測データやステータス情報の受信、衛星に対する指示の送信などがあります。また受信したステータス情報からは、ソーラーパネルによるバッテリーの蓄電状況や放射線の影響による挙動の変化など、衛星の様々な要因を監視して必要に応じたアクションを取ります。お客様の機器を搭載する衛星の場合には、その機器を使って宇宙で行うミッションも運用に含まれます。
私がAxelGlobe事業本部のメンバーたちと協力して運用の自動化を図ったのは、まさに衛星への指示や監視の部分です。以前は撮影指示を、衛星と地上基地局の位置関係から決まる通信タイミングに合わせて手動で行っていました。撮影指示は、撮影したいターゲットのエリアと、衛星の位置・軌道・姿勢など各種条件の組み合わせの世界で、人の手で行う負荷は大きいです。自動化によって、メンバーは別の業務にリソースを割けますし、ヒューマンエラーの予防も実現できました。監視も同様に、ステータス情報の数値チェックを自動化し、閾値を超えた際にアラートを上げるといった仕組みを構築しました。
「アクセルスペース流」ビジネスと求める人材像
エンジニアの採用に関わる者として、求める人材像についても少しだけお話します。衛星開発の基本的な流れは、 IT 分野のシステム開発に共通するところがあります。多くの場合は「要件定義・設計・開発(製造)・テスト・運用」のフェーズで進められると同時に、ユニークな運用上の制約や自由も存在します。例えば、周回軌道上を飛ぶ衛星の修理は困難です。このため、できるだけ安全に利用できるように様々な制御があらかじめ自動化されています。一方、衛星は360度好きな方向を向けます。安全上の制約の範囲内であれば、設計・打ち上げ当初に想定されていなかったような使い方もできるのです。実際に、衛星から衛星を撮影する「宇宙状況把握(SSA)」という事業では、実現に向けたソフトウェア開発が打ち上げ後に行われました。これは衛星開発の全プロセス、サービス提供などをトータルで手掛けるアクセルスペースならではの特徴と面白さだと考えています。
アクセルスペースの仕事では、専門スキルを生かしつつ、積極的なコミュニケーションから要望や制約・相関を理解して、今までなかったものを形にしたり、自ら価値を発見して最大化することがとても大切です。こうした取り組みに適性を感じられる方や、宇宙以外の産業分野で技術的なモデリング、マネジメントの経験を積んでこられた方などは、おそらくフィットしやすいと思います。
思い描く未来・Vision
アクセルスペースでは「Space within Your Reach ~宇宙を普通の場所に~」をビジョンに掲げています。誰もが便利に衛星を使える未来を実現することは、まさに私が担当する衛星の運用自動化やサービス化の本質だと思います。
メンバーに求める行動指針「Axelspace Way」に絡めると、理想の実現にはチャレンジが不可欠ですから、「やめとけよ」ではなく「やってみようよ」と言ってあげられる会社の文化を大切にしたいです。実現が困難に思える時でも、近くまで行ってみると道は見つかるものです。本質や方向性さえ見失わなければ別の道を選ぶこともできますし、仮に失敗したとしても進むべき道が必ずあると考えて仕事に取り組んでいます。