本連載では、未来に向けてアクセルスペースをリードするメンバーをご紹介します。第9回に登場するのは、CIO & CDOの宮川 祐吉です。過去、エンジニア、コンサルタントとして活躍してきた宮川がアクセルスペースに入社するまでの経緯や、デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みなどについて話を聞きました。
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プロフィール
宮川 祐吉/CIO & CDO
独立系SIerにて各種のソフトウェア開発を担当後、同社の米国支社に赴任し、顧客企業に対しERPを含む各種システムの導入プロジェクトを推進するとともに支社長までを歴任。楽天グループに転籍後、ECおよびネットスーパーなどの各種サービスにおけるシステム開発責任者を歴任し、同社による小売企業への投資プロジェクトでは投資先企業の大規模なシステム再編を完遂。現在、株式会社アクセルスペースホールディングス/株式会社アクセルスペース 執行役員 CIO兼CDO
エンジニアとしてのキャリア形成と渡米
大学卒業後に就職した企業では1992年からの約10年間、主にWebアプリケーション分野のエンジニアとして様々なシステムの構築に携わりました。その後、アメリカで16年間コンサルタント兼エンジニアの仕事に携わり、CEOとしての経営も経験しました。
渡米のきっかけは、ソフトウェア関連書籍の出版プロジェクトを通じたある出会いからでした。当時は、日本のIT業界におけるソフトウェアテストの手法がまだ十分に確立されておらず、世界に後れを取っている状況でした。そこで「ソフトウェアテスト技術者交流会」というコミュニティの仲間たちと協力して、業界の底上げを目的とした海外専門書の翻訳出版などを行いました。この出版プロジェクトを通じて知り合った、26歳のオーストラリア人女性が既にマネージャーとして活躍している姿を見て、年功序列の日本との違いに大きなショックを受けました。このことがきっかけで「海外を経験しなければ」との思いが芽生え、当時勤めていた会社の人事部や現地法人の支社長に掛け合い、渡米の機会を得ることができました。
また、日本のインバウンド需要の高まりを機に帰国した後は、航空業界向けシステムの構築、ECシステム関連の開発、企業のシステム再編などにも携わりました。
宇宙ベンチャーであることは重要ではなかった
私がアクセルスペースへの入社を決めたポイントのひとつは、システム構築における今後の可能性です。多くの大企業では規模などの制約から、会計、生産、人事などのシステムを部分最適のアプローチでリプレースしていかざるを得ません。これに対し、アクセルスペースでは今後の拡大を見据えたシステムを、より現代的なアプローチで最適なシステム環境を提供していけると感じたからです。
入社にあたり、アクセルスペースが宇宙ビジネスを営む企業であることについては、さほど気に留めませんでした。なぜなら、これまでの異業種での経験を必ず生かせると考えていたからです。実際に過去、”Order to Cash”(受注から回収まで)のほぼ全ての領域のシステムに携わってきたことは、今の仕事でも非常に役に立っていると思います。
CIO & CDOとしての役割
アクセルスペースでの私の主な役割は二つです。一つは、事業部などと連携しながら必要な領域をシステムでカバーしていくCIO(最高情報責任者)としての役割。もう一つが、デジタルを活用してあらゆるものを繋ぎ、会社が持つデータ資産の価値最大化を図るCDOとしての役割です。
現状は、CDOとしての業務の比重が大きいです。例えば、現在注力しているデータ基盤関連のプロジェクトの主要テーマのひとつに、AIの活用があります。AIはご存知の通り、1990年代に始まった「インターネットの普及」と同等、もしくはそれ以上の変革を企業経営にもたらすこととなるでしょうし、その可能性は業務効率化だけに留まりません。衛星をつくり、打ち上げ、周回軌道上での運用を通じて蓄積してきた膨大なデータは、アクセルスペースの強みのひとつです。従って、これらのデータをより有効な形で蓄積して、AIなどを活用しながら今後の品質と生産性の向上にどう生かしていくかは極めて重要なミッションのひとつなのです。
アクセルスペース最大の魅力とは
多くのチャレンジ機会がある点は、アクセルスペースの大きな魅力だと思います。約16年の衛星ビジネスの中で蓄積してきたデータやノウハウを使い、真っ白なキャンバスに絵を描けるエンジニアはとても恵まれていると思います。だからこそ私は、会社の3つの行動指針であるAxelspace Wayの中でも、特に「Celebrate challenges」を重視しています。メンバーたちには、与えられた仕事を受動的にこなすのではなく、この稀有な環境を生かした積極的なチャレンジを期待しています。
思い描く未来・Vision
今後数年のうちに、ロケットや衛星の打ち上げ数の急増とともに、宇宙産業の中で様々な再編が起こると予想しています。衛星の開発から打ち上げ、サービス提供までを一気通貫で手掛ける弊社の役割もますます大きくなっていきます。競争力のある新たな仲間を迎え、ホールディングスとしてビジネスを拡大していく上では、グローバルな企業間でのシステム統合も必要となってくるでしょう。その中で、ビジネス、システムの両面から今後の成長戦略を描きつつ、また企業としてのパフォーマンスをシステム面からしっかり支えていきたいです。
また、将来的には私たちが持つデータの一部を、大学などのアカデミアなどに向けて公開していけたらと考えています。未来を担う学生たちの研究開発を会社として応援することには、とても大きな意味があると思うからです。